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院長コラム

食生活と歯並び

歯列不正の悪化
歯並びは食習慣、生活習慣のなかで育まれる。しかし最近、栄養バランスは良いが咀嚼性(歯ごたえ)のない食事になってきている。その、いわゆる軟食化により正常な顎の機能の発達を得られない子供が増加し、歯列不正が増加してきている。正常な歯列では上顎は口蓋部(口の天井部分)の側方成長により幅が成長し、下顎は舌側よりに萌出してきた大臼歯が顎の機能の影響をうけて直立し、歯列幅を成長させる。

歯列発育の人類学的知見
下顎骨の長さ・高さ・幅は、現代人は縄文人より小さく、華奢な顔つきになってきている。
また、下顎の幅は臼歯部の植立状態(舌側の傾斜度)が関与していると考えられる。現代においても日本人と異なる食生活環境のフィジー人・サモア人は奥歯の軸は日本人にくらべ直立傾向にあり、咀嚼機能が強い事が関与していると思われる。

 

咀嚼機能と歯列形態との関連性
現代日本人児童でも、歯列幅が増加すると下顎大臼歯は直立する傾向がみられた。
また成人女性を調べた結果、上下顎歯列幅が大きい人ほど、顎が横に大きく動き、咬合力が強く、下顎大臼歯は直立していた。
このことから、顎の幅が大きい人は、顎が側方に大きく動く臼磨運動していることが示された。
このことから顎の横方向の運動が大臼歯の位置関係を伴う歯列幅の拡大につながる可能性が考えられる。

硬性ガム咀嚼トレーニングが咀嚼機能に及ぼす影響
食習慣に問題(早食い、片噛、口唇閉鎖不全等)がある小学5年生に「硬性ガム」による咀嚼トレーニングを実験的に行ったところ、3か月後に咀嚼機能と歯列成長の促進が認められた。
硬性ガムによる咀嚼トレーニングは歯列不正の予防に有効と考えられる。

矯正治療の問題点
近年の矯正治療は歯列の拡大装置を用いて行うことが多い。この治療の問題点に後戻りがある。
本来の狭い歯列は患者の機能不全の現れと考えられる。よって機能面(噛む習慣)でもサポートする口腔環境の変化が必要と思われる。

おわりに

口腔機能障害は不正咬合の発生に大きく関与している。その予防手段として、顎口腔機能の健全な発育を目的とした食育を実践することが必要である。歯並びは噛む事と密接に関係し、古代人の咀嚼を参考にすれば現代人の歯列不正が少なくなる可能性がある。

 

2013.9.24広瀬俊


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