東京都中央区の歯医者、八丁堀広瀬歯科医院。ホワイトニング審美歯科予防歯科はおまかせください。八丁堀駅 A5出口徒歩1分


院長コラム

人類学から見た、歯並び

歯並びの悪化
顎の成長は、食習慣、生活習慣のなかで育まれます。しかし、近年の日本では食の軟食化により正常な顎口腔機能の発達を得られない児童が増加し、歯並びの悪化が見られます。
正常な歯列では上の顎は、正中の骨のつなぎ目(正中口蓋縫合)が横方向に成長することにより歯列幅が成長します。下顎は舌側よりに萌出してきた大臼歯が、顎口腔機能の影響をうけて直立し、幅を成長させます。 食生活の変化として、栄養バランスは良いが咀嚼性(歯ごたえ)のない食事になってきている影響があると考えられます。

歯列発育の人類学的知見
下顎骨の長さ・高さ・幅は、現代人は縄文人より小さい。特に下顎枝(顎骨の後方部)の減少が顕著です。
現代人は、咀嚼機能の減退によち下顎枝が退化したことから、華奢な顔つきになってきていると推測されます。
また、下顎歯列幅の大きさに臼歯部の歯軸の状態(傾斜度)が関与していると考えられています。現代においても日本人と異なる食生活環境のフィジー人・サモア人(人類学的には近い存在)は大臼歯の歯軸が日本人にくらべ直立傾向にあります。それは咀嚼機能が強い事が関与していると思われます。

咀嚼機能と歯列形態との関連性
現代日本人児童では、歯列幅が増加すると下顎大臼歯は直立する傾向がみられます。また成人女性を調べた結果、上下顎歯列幅が大きい人ほど、咀嚼する時の側方運動が大きく(顎が横に大きく動く)、咬合力が強く、下顎大臼歯は直立していました。
このことから、上下顎歯列幅が大きい人は、顎が側方に大きく動くグラインディングタイプ咀嚼(臼磨運動)をしていることが示されました。このことからグラインディングタイプ咀嚼への誘導が大臼歯の位置関係を伴う歯列幅の増大につながる可能性が考えられます。

硬性ガム咀嚼トレーニングが咀嚼機能に及ぼす影響
食習慣に問題(早食い、片噛、口唇閉鎖不全等)がある小学5年生に「硬性ガム」による咀嚼トレーニングを実験的に行ったところ、3か月後に咀嚼機能と歯列成長の促進が認められました。
硬性ガムによってグラインディングタイプ咀嚼を学習する咀嚼トレーニングは、叢生予防(乱杭歯)に有効と考えられます。

今日の矯正治療。抜歯治療か?非抜歯治療か?
近年の矯正治療は、装置を用いた歯列の拡大・非抜歯治療にシフトしてきました。この治療の問題点に後戻りがあります。本来の狭い歯列(乱杭歯)は、機能不全の現れであります。よって機能的にもサポートする口腔環境の変化が必要と思われます。

おわりに
口腔機能障害は不正咬合の発生に大きく関与しています。その予防手段として、顎口腔機能の健全な発育を目的とした食育を実践することが必要であります。歯並びは咀嚼機能と密接に関係し、古代人の咀嚼を参考にすれば現代人の叢生はなくなる可能性があります。

2017.12.15 広瀬 俊


症例案内