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妊婦の歯科治療と口腔内環境の変化について
女性は妊娠するとホルモンバランスの変化から、歯肉が腫れたり出血しやすくなったりします。さらに、ツワリなどもあり口腔清掃がしづらくなり口腔内環境が悪化。疾患リスクがあがる傾向にあります。そこに来て、妊娠中の歯科治療は敬遠されがちであります。
そこで、妊娠中でも安全・安心に治療が出来るように要点をお話します。
妊娠による身体と口腔内環境の変化
女性が妊娠すると、ホルモンバランスが変化することにより身体に様々な変化がみられます。全身的には、胎児を取り巻く環境である胎盤、子宮、皮下脂肪、循環血液量の増量に伴い体重が8〜12k増加する。
口腔内での変化では、妊娠初期にツワリが挙げられ、口腔清掃不足、嗜好の変化、偏食、少量頻回の食事などから口腔内が酸性に傾き口腔内環境の悪化がみられる。
ホルモンバランスの変化が口腔内でもみられ、エストロゲン、プロゲステロンの影響により毛細血管の拡張、歯周病菌の活性化が起り、歯肉の腫脹、出血する「妊娠性歯肉炎」が発症しやすくなります。
重度の妊娠性歯肉炎になると早産(37週未満)低出生体重児(2500g未満)のリスクが高まるとの報告もあります。
また、虫歯の原因になるミュータンス菌が妊娠中の口腔環境不良で増加すると、将来生れてくる赤ちゃんにミュータンス菌の母子伝搬(虫歯を染す)ことにもなります。専門の先生は、生まれてくる子供の為「マイナス1歳からの口腔ケア」を推奨しています。
歯科治療での注意
妊娠中期(妊娠16~27週)の安定期で健康であれば、ほとんどの歯科治療はできます。
まずはかかりつけの産婦人科の先生に全身管理に問題がないか確認してください。
レントゲン
日本で1年間で浴びる自然被曝量が1.5mSv。対して歯科のレントゲン被曝量は0.01〜0.03mSv。さらに防護エプロン、デジタルレントゲン使用で胎児への影響はほぼ0と云えますので安心して下さい。
歯科麻酔
歯科治療で使用する通常の局所麻酔薬は胎児への影響はほとんどありません。
ただし、局所麻酔薬の中には軽度ですが子宮収縮作用と分娩促進作用があるものがありますので妊娠後期(28週以降)では注意が必要です。
薬
基本的には全て注意が必要です。特に妊娠初期(15週まで)では胎児への影響が大きいので使用を控え、それ以降も薬の有益性が危険性を上回ると判断された場合に限り必要最小限の使用となります。薬に関してはかかりつけの産科医との連携が必要です。
仰臥位低血圧症候群
妊娠後期に大きくなった子宮が下大静脈を圧迫して起る、低血圧症をおこす症状です。
解消法は左を下にした横向きに体位をかえると血圧が正常に戻り解決します。
2015.2.26 広瀬