食文化が歯をつくる。日本人にとって良い噛み合わせとは?
「口を開けるとあごが痛む」「音がする」「口が開けにくい」と云われる顎関節症の方が増えています。その原因は噛み合わせの乱れにあるといわれています。ただ、あまり理解されていないのは「歯並びと噛み合わせは、別のもの」ということ。そもそも噛み合わせが良いとは、どういう歯の状態を指すのでしょうか?
日本人にとって一番大切な歯の役割は、食べ物をよく噛み、すり潰して咀嚼すること。繊維質の多い米を主食にしてきた私たちは、よく噛むことで唾液中の消化酵素アミラーゼを分泌し、でんぷんを糖に分解して消化します。そのため奥歯もよく使われ全体的にすり減っているのが特徴です。
これに対して、歯並びが綺麗でいかにも健康そうな欧米人の歯は、以外にも奥歯での咀嚼には向いていません。歴史を通じて繊維質の食品を多く食べていない彼らは、日本人よりもアミラーゼを分泌する割合が少なく、食べ物をよく噛んで消化しやすくする習慣が少ないのだそうです。欧米で歯と云えばコミュニケーションのツール。まずは笑顔で人間関係をつくる文化が重んじられ、歯並びを大切にする意識が広がりました。
食文化によって食べ物を消化する方法は違い、咀嚼の考え方、歯の作られ方や役割も違います。これは脈々と受け継がれてきた民族的な違い。小さな頃から洋食中心の人でも、遺伝子のしくみは簡単には変えられません。 つまり、私たちに必要なのは、日本の食文化に合った歯の役割しっかり果たせる噛み合わせです。国の歴史や文化によって、同じ歯でも重視するポイントが異なります。